少子高齢化社会となり、先祖代々のお墓の継承が難しくなり「墓じまい」を検討する人が増えてきています。「墓じまい」とはどういうものなのか、ご紹介します。
・そもそも墓じまいとは
言葉の通りお墓を撤去・処分することです。「墓終い」、「墓仕舞い」などと書かれることもあります。墓石を撤去したあとの供養方法を決めておかなければなりません。納骨していた遺骨を別の墓地に移す場合「改葬」と呼ばれます。墓じまいに対してマイナスなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、“きちんと供養するために場所や方法を整える“という前向きな選択の一つなのです。
・墓じまい増加の理由
①お墓を継ぐ人がいない
未婚率や少子化率が上がり、子供(後継者)がいない人が増えています。子供がいたとしても一人娘が嫁いでしまったり遠方で暮らしているなどお墓の継承が難しくなっています。
②墓参りをすることが困難
仕事などの関係で生まれ育った土地から離れて暮らす人は多く、遠方にお墓がある場合なかなかお墓参りに行くこと自体が難しいです。高齢になるほどお墓のお手入れが負担になってしまうので、墓じまいして近隣の墓地へ改葬する人もいます。
③経済的な理由
お墓には年間かかる費用があります。お寺との関係が希薄になるなかで管理費やお布施代などの費用が負担に感じる人が増えています。
・墓じまいの費用
①墓石の撤去
お墓の敷地を返すために更地にしなければなりません。墓地の広さや墓石の大きさ等によって撤去にかかる費用が異なります。霊園や墓地によっては決められた石材店に依頼しなければならない場合があるので見積含めて事前に確認しましょう。
②出骨作業
納骨していたものを取り出す費用としてご遺骨一体あたり大体4万円~5万円かかります。
③納骨料
新しく納骨する際に「閉眼供養」に対して、「開眼供養」を行います。お布施なので決められた金額はありませんが、お気持ちとして1万円~5万円ほどかかります。
④遺骨移送
ご遺骨一体に対しておよそ2万円~3万円かかります。業者により長距離移送に追加料金がかかる場合があるので事前に確認しましょう。
⑤行政手続き
改葬を行うにあたり「埋葬証明書」や「改葬許可証」の発行手数料がかかります。
お墓がある場所が寺院墓地だった場合はさらに離檀料や御魂抜き法要のお布施が必要になります。
・墓じまいの流れ
①親族の同意を得る&現在の墓地管理者へ墓じまいの希望を伝える
親族間でのトラブルを防ぐために具体的に墓じまいの手続きなどを進める前にまずは親族の同意を得られるようにしましょう。中には先祖代々受け継いでいくのが当たり前だという考えから墓じまいを受け入れられない方もいます。反対されるかもしれないことを念頭に置いて墓じまいを検討している理由を丁寧に説明していきましょう。
親族から同意を得られたら墓じまいに向けて動き出せます。まずは現在お墓がある墓地の管理者へ墓じまいしたい旨を連絡します。ここでもお寺にとっては良い話ではないため反感を買ったり高額な費用を請求されたりなどのトラブルが起こる可能性があります。そのようなことがないよう、これまでの感謝を伝えつつ、墓じまいを検討するに至った事情を丁寧に説明していきましょう。
②新しく移送する墓地の管理者から「受入証明書」を発行してもらう
新しく納骨する受け入れ先が決まったら、受け入れ先の管理者に連絡をして「受入証明書」という受け入れを許可したという証明書を発行してもらいます。新規の納骨を受け入れできない霊園などもあるので事前に確認しておくことをおすすめします。
③市町村役場から「改葬許可申請書」をもらう
現在お墓がある墓地の市町村役場に「改葬許可申請書」を貰い、必要事項を記入します。
④墓地の管理者から「埋葬証明書」を発行してもらう
現在お墓がある墓地の管理者から墓地に遺骨が埋葬されていることを証明する「埋葬証明書」を発行してもらいます。
⑤遺骨を取り出し、墓石を撤去する
納骨していた遺骨を取り出す際には「閉眼供養」が必要です。その際に僧侶へお布施代を支払います。閉眼供養後にお墓から遺骨を取り出し、墓石を解体・撤去します。これは石材店が行いますが、指定の石材店の有無や見積もりなど事前に調べておく必要があります。
⑥「改葬許可証」を移転先へ提出し、許可を得る
現在のお墓がある土地の市町村役所に「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋葬証明書」を提出し、墓じまいと改葬することを許可する証明書、「改葬許可証」を発行してもらいます。これを新たな移送先に提出して許可してもらいます。
⑦移転先に納骨する
新たな納骨先として墓石だけでなく、樹木葬や永代供養などを選択する人もいます。
まとめ
墓じまいは面倒な手続きが必要だったり費用も安くはありません。しかし、今後さらに自分たちのライフスタイルに合わせて墓じまいを選択する人は増えていくことが予想されます。親族やお寺などに相談しながら慎重に進めていきましょう。