家族のあり方の変化や高齢化とともに、一人暮らし世帯が増えています。
さまざまな契約時に求められる身元保証を、家族に代わっておこなってくれるのが「身元保証契約」です。
この記事では、身元保証について、どのような方が必要となるのか、その役割や身元保証人がいない場合の対応方法などについて解説しています。
また、最近増えている身元保証サービス会社についても紹介しています。
身元保証とは?
終活においては、介護付き老人ホームや高齢者介護施設などへの入居の際に必要となる、「保証人」や「身元引受人」をおこなうことを指します。
入居者の緊急時の対応や金銭的な保証など、老人ホームや施設では責任の負えないことがあります。
その際に、ホームなどの運営に支障が出ないよう、かならず保証人を立てることが求められるのです。
身元保証を必要とする人とは?
ご家族がいれば、身元を保証してくれるでしょう。
しかし、身元を保証してくれるご家族がいない方も増えています。
たとえば
- お子様のいないご夫婦
- 未婚のおひとりさま
- お子様との相性が悪い方
- お子様が遠方にいて頼れない方
- 自分の老後で家族に迷惑をかけたくない方
- 配偶者が亡くなり、独り身になった方
- 離婚されてお子様と疎遠な方
などです。
この記事を読まれているあなたは、このどれかに当てはまっているかもしれません。
平成21年の国勢調査では、おひとりさま世帯が38%と4割に迫る勢いです[1] 。
家族のかたちが多様化する現代社会において、身元を保証してくれる家族がなく困っている方は少なくありません。
身元保証人は、友人や知人などでも、条件を満たせば引き受けることができます。
しかし、身元保証人の役割と責任は大きいものです。
気軽にお願いできるわけではありませんね。
身元保証人の役割とは
ここでは、身元保証人の役割について紹介します。
老人ホームや施設にとって身元保証人は、入居者の相談窓口であり、責任者でもあります。
治療方針の承諾や入院手続き
老人ホームや高齢者施設に入居している高齢者は、急な病気や体調不良、またはけがなどで医師の治療を必要とすることがよくあります。
症状によっては救急搬送される場合もあります。
このようなときに、医師の治療方針を承諾したり、病院への手続きを代行するのが身元保証人です。
身元保証人は、老人ホームや高齢者施設から要請があれば、行かなければなりません。
万一入院となった場合には、入院手続きや身の回りの準備のために、多くの時間を費やすことになります。
費用の未払いや支払い滞納など経済的な問題が発生したときの保証
老人ホームや施設の費用を入居者が支払えなくなったとき、身元保証人に支払義務があります。
本人の違う口座に預貯金がある場合には、引き落とし口座の変更手続きも行います。
死亡時の退去手続き
入居者が死亡したとき、身元保証人が身柄を引き取ります。
その後の退去手続きや入居費用の精算、使っていたものなどを引き取る作業などもおこないます。
身元保証人がいない場合はどうすればいい?
では、身元の保証をお願いできる方がいない場合、どのようにすればよいでしょうか。
具体的には、後見人を立てる、身元保証サービスを利用するなどの方法があります。
後見人を立てて入居できる老人ホームなどを探す
自分の希望や意思を代行してもらう制度に、法定後見制度があります。
後見人は、成年後見人と任意後見人があります。
成年後見人が、判断能力が既に失われたか又は不十分な状態である場合に選定されるのに対し、任意後見人は、判断能力があるうちに自分で後見人を選ぶ違いがあります。
老人ホームを探してみると、身元保証人がいなくても、後見人がいることを条件に入居を認めている場合もあります。
後見人は、本人に代わって契約行為や手続きを行うのが業務です。
そのため、救急搬送時に病院に駆けつけたり、退院時に付き添ったりすることはしません。
後見人は、ご本人の財産を管理しています。そのため、ご本人に代わって入居費用などの支払いをしています。
財産管理をしているという信頼から、老人ホームや高齢者施設では、身元保証人でなくても後見人がいれば入居できるところもあるのです。
身元保証サービスを利用する
ここ数年、身元保証契約をしてくれる保証サービス会社が増えています。
必要な保証人をどうしても探すことができない方のために、有償で保証人となってくれる会社です。
ここでは身元保証サービス会社について、まとめてみましょう。
サービス内容
身元保証サービスの多くは、次のような業務を提供しています。
入院や施設入居時の身元保証
入院や老人ホームなどの施設の入居時の緊急時の連絡先となってくれます。
入院や入居に関する事務手続きをおこない、身元保証人となります。
入院時には、治療方針を伝えてくれたり、手術への同意などもおこないます。
日常支援
定期的な連絡や訪問による見守り、買い物などへの同行、郵便物の管理、生活口座の管理などを行います。
法律支援
身元保証サービスを行う業者の多くは、弁護士や司法書士など法律の専門家による支援を行っています。
認知症時の後見人
法律上、認知症になってしまった場合は判断能力が完璧でないと判断されます。
そのため、買い物や書類の手続きなどを本人に代わっておこなう後見人を決める必要があります。
葬儀供養の手配
死亡時の医療機関や施設への支払い、身柄の引き取り、葬儀や納骨先の確認なども含まれます。
葬儀・納骨・死後事務の代行
保証会社にサービスを依頼する方の多くは、葬儀など自分が亡くなったあとのことのサービスも希望しています。
死亡届の提出、年金受給手続きの停止、電気・ガス・水道の解約、医療費の精算などを行います。
身元保証サービス会社によっては、ここに紹介したサービスがオプションになっている場合もあります。契約時に確認をしてください。
身元保証サービスの費用
サービス内容によりますが、50万円程度から200万円程度が相場でしょう。
入会金や会費、預託金、事務管理費、都度生活支援費用など、さまざまな項目があり、総額が分かりづらくなっている会社も少なくありません。
料金については、慎重に内容を確認したいですね。
身元保証サービスの選び方と注意点
身元保証サービスは、会社のプランによって金額が大きく変わります。
身元保証会社は、お元気なうちに時間をかけて、慎重に選ぶようにしましょう。
サービス内容を確認
会社によってサービス内容はさまざまです。
まずは自分が最低限希望する業務を明確にして、サービスとして提供してもらえる会社なのか、確認してみましょう。
財産管理を任せられるのか
老人ホームや介護施設では、高額な現金や貴重品の持ち込みが制限されている場合が少なくありません。
そのため、入居することで、ご自身の財産の管理を身元保証会社に委託することになります。
身元保証サービス会社が、財産の管理を第三者による監視ができる信託口座でおこなっていれば、安心です。
万一身元保証サービス会社が倒産した場合、費用が戻ってくる可能性が低いので、経営の安定性も調べておきたいですね。
遺産の寄付を前提としていないか
契約者が亡くなった際、財産の残りを身元保証会社に寄付するという契約の身元保証会社もあります。
死後の財産の処分方法については、ご自分で選択できることも大切です。
契約書は、面倒でもしっかりと読み、納得してから契約しましょう。
まとめ
身元保証契約についてまとめてみました。
どんな人に身元保証契約が必要となるのか、身元保証契約とはどのようなものかをおわかりいただけたと思います。
身元保証契約は、社会的にも資産的にもあなたの代わりになってくれるサービスです。
契約を結ぶ際には、本当に信頼できる業者かどうかしっかりと見極めることが大切です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD247RS0U1A221C2000000/